話題の映画「シビル・ウォー」をAmazon primeでみました。すごく楽しみにしてたんですけど、ちょっとびっくりしてしまって、終わった後は「ブログに感想を出すつもりだったけど、正直に書いていいんだろうか」という気持ちになりました。
しかしやはり書きたい。しかししかし、失礼があってはいけないと思い、もう一度視聴しました。ウィキペディアにも目を通しました。それでも理解できていないことも、見落としていることもたくさんあると思う。
その程度の感想です。
しかしまあ、感想に入る前にあらすじを簡単に。ウィキペディアからです。ちなみにウィキにはあらすじどころか、ネタバレまでありますので、ご興味のある方はぜひ。
19の州が合衆国から離脱しテキサス州とカリフォルニア州からなる「西部勢力」と連邦政府による内戦が勃発した近未来の米国を舞台に、ニューヨークから首都ワシントンD.C.へと向かう4人のジャーナリストを描く[11][12]。
念のためにおさえておきたい、ジャーナリスト4人のキャラクターはこんな感じ ↓
・戦場カメラマン。キャリアも長く悲惨な現場をたくさんみてきたリー(女性)
・記者。ちょっとふざけた感じもあるけど普通にまじめなジョエル(男性)
・老人で肥満気味、素早く動けない、ベテラン記者サミー(男性)
・ジェシー。リーに憧れる(多分)10代。田舎の農場から出てきた一般人(女性)
「シビル・ウォー」の感想・感銘をうけたところ
1、「救いがたい」ジャーナリストという人々
父のニコンを抱えて現れたジェシーを連れていくことは、常識的にはあり得ないことだった。やってはいけないことだったかもしれない。なぜならジェシーはまだ子供で、報道の仕事をしたことがない、言ってみれば素人だ。
しかし車に乗せたのは、ジェシーが自分たちと「同じ人種」だと思ったからだった。
ベテランのサミーが言う。「ジェシーは若い頃のリーに似ている」と。リーもおそらく同じことを感じていて、ジェシーには先輩カメラマンとしての立場からのアドバイスを与えもする。
危険な目に遭い、悲惨な現場を見ながら、しかし周りの大人たちの助けもあって、ジェシーは次第にジャーナリストとして成長していく。
「これまで生きてきた中で一番怖い思いをした。でも、命の躍動を感じた」
命の危機にあっても、いや、命が危ぶまれる状況だからこそ強烈な充実を感じる、ジャーナリストという人々の「救いのなさ」がよく描かれている。
ラストシーンでジェシーは、憧れてきた先輩の、文字通り「屍を越えて」シャッターを切る。恐怖に泣き、嘔吐した少女が一人前の戦場カメラマンとして銃弾の下を進む姿には、ほろ苦くはあるが感銘を覚える。
2、「ハゲワシと少女」ジャーナリストと人道、倫理
報道と倫理を考える上でよく出される写真に「ハゲワシと少女」がある。実際には少女の母がそばにいて、危険はなかったそうなのだが、救助よりもスクープを狙ったとしてカメラマンには批判が集まった。
スクープか人命救助か。この命題は「シビル・ウォー」の中でも提示されている。
血まみれの人間がつるされた場面で、ジェシーは動揺してシャッターを切ることができなかった。しかしリーは冷静に犯人に話しかけ、被害者と並んだ写真を撮った。
リー自身もよいことだとは、おそらく思ってはいない。しかしさまざま悲惨な現場にジャーナリストとして居合わせ、彼女は何度も写真を撮ってきた。それは、祖国への警告の意味であったという。
彼女には彼女なりの使命感があった。おそらくはそれが、悲惨な写真を撮る「言い訳」に近いものだったのだと思う。しかしリーがそのことをジェシーに言葉で伝えることはなかった。ジェシーもきっと、自分で考えなくてはいけないということなんだろう。
重い命題に答えは出さないが、葛藤するジャーナリストの姿を描き、ジェシーの目を通して一般人の私たちに考えることを迫る。私は、この映画の意義はここにあるのではないかと思った。
「シビル・ウォー」の感想・なんでそうなる? のところ
とまあ、まじめな話はこれくらにして、この映画で自分が「なんでやねーん」となったところをボチボチ書いていこうと思います。
1、「シビル・ウォー」は内戦???
まずは内戦の定義を。
weblo辞書さんがわかりやすい。
ない‐せん【内戦】
読み方:ないせん一国内における、同じ国民どうしの戦い。内乱。⇔外戦。
まあ、同じ国民同士といえばそうなんだけど、終盤で西部勢力が出てくるまでは何と何が戦っているのかよくわからないんですよ。リンチがあったりスナイパー合戦があったり有色人種の虐殺現場があったりと、悲惨は悲惨でああ怖いなんだけど、ほんま、なんで戦ってんの?
内戦というよりは秩序が壊れた街って感じ。治安が悪い。それなんですよ。
ただ、始めごろのせりふに「あっちには人民軍やらマオイストやらが……」みたいなのがあって、設定ではいろいろ勢力が入り乱れて戦ってる、つまり内戦というものはあったらしいですね。
でもそれが出てこないので、最後西部勢力が政府軍と戦ってるところを見ると、「クーデター?」って気がしないでもない。
革新的なカリフォルニアと保守的なテキサスが組んだことで、現状の共和党、民主党の争いではないよ、ってな話になっているそうですが、なんで組んだかの理由もわからないし、本当にわからない。
とにかく治安めちゃくちゃでいろんな武装勢力が入り乱れ、みたいなところは想像で補うしかない。政治に詳しくない私にはちょっとしんどかったです。
2、治安めちゃくちゃ通貨暴落、なのにお風呂でリラックス?
映画の冒頭では、水の配給が行われる場面が描かれます。みんなイライラしてて、警官と殴り合いにまでなってる、ものすごく大変そうな感じ。
ところがリーが、ホテルの部屋でバスタブにつかる場面が出てくるんです。
その前にホテルマンから「電気が不安定だからエレベーターが止まるかもしれないよ」と言われて10階まで階段で上がった場面があったのに。
そりゃ汗も流したくなるだろうって? まあそうでしょうけど、そんなインフラガタガタの場所で、湯を張れるもんですかね。わからない。そのホテルが特別扱いでもないのは、先の電気供給の件でうっすらにおわされているわけですよ。
いやそもそも飲み水さえ不足してるから配給してんのやろ。
また途中で、「米ドルだったら売らないけどカナダドルなら」という場面があり、通貨が暴落していることを示唆する場面もあります。
……突然ですが円安、どうです? 物価が上がって大変じゃないですか? 私は大変です。円がたかだか50円ほど安くなっただけで、うちは食費がすごいことになってますよ。
そもそも庶民の生活はさほど出てこないのですが、それでも通貨の暴落って大変なことだと思うのに、人々が困窮した印象はあまり見られなかったな。それは残念。
3、ベテラン戦場カメラマン
リーはベテランの戦場カメラマン。世界の戦争、紛争、ヘイトクライム、いろんな修羅場をくぐってきて、経験値も豊富なわけです。
そのリーに、終盤近くに変化が生じます。仲間の残酷な写真を消し、突入作戦では写真を撮ることを忘れてしまう。
リーはもともと、争いの写真を撮るのは祖国への警告だと言っていました。こうならないように、シグナルを発していたのです。それが内戦になり、無意味であったと知り、打ちのめされたためにシャッターを押せなくなったのでしょう。
それはわからなくもない。ただちょっとなんとなく、ジェシーに花を持たせるための演出にも見えなくな……。
また驚くのが序盤でジェシーに「防弾チョッキとヘルメットを買いなさい」と言っていたのに、最後の最後のガチ軍隊の突入戦に、ノーヘルメットノーチョッキで現れることです。
なんでや! チョッキ着てたらあのスクープは君のものやったんやで!
ジャーナリストの方々は、危険な現場に行くときは訓練を受けたり、護衛を雇ったりするというじゃないですか。リーはその辺プロだと思うんです。なぜ……?
まあその辺は揚げ足取りになるでしょうから、いちいち言わなくていい気もするけど気にはなる。しかし最後の突入戦は迫力があり、もっとみていたかったと思わせられる場面でもありました。
4、ヒスパニックの人々
ここはラテンアメリカ好きとして言っておきたいところ。カリフォルニア、テキサスで動乱が起きているのに、ヒスパニックの存在感がないのがさみしい。
普段から(?)銃どころか対戦車砲まで扱っているとうわさのカルテルおよびギャングの皆さんが、指をくわえてみているとは到底思えないのです。ひと暴れしてほしかった。
いやでもあそこは正規軍ぽかったしな。カルテルが入る隙はないのかしら。
しかし考えてみたら隣国は領土を取り戻すチャンスなわけでしてね(メキシコは領土をアメリカに売却した歴史があるのです)
とはいえ、内戦ということですので、国際関係までごちゃごちゃやるつもりはなかったんだろうし、描くもの、描かないものを取捨選択するのは当然のことですから、それでいいのです。うん。
まとめ
そんなこんなでしたけれども、みてよかったです。気になっていたので。
そうそう、気になるといえばもうひとつ。作中の大統領はトランプ氏を模していると思うのですが、そこはあまりよいことではないように私は思いました。トランプ氏にはよくない評価もありますが、かといってああいう扱いが正当だとも思えないという感じです。
その辺はブリティッシュジョークなんでしょうか。
この作品についてはひとつの寓話的な物語として受け止め、現実と接続することにはさほどの意味を見出せない、そんなところです。