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読書とラテンアメリカが好き。

ラテンアメリカを好きになったきっかけ「はるかなる黄金帝国」と「まぼろしの都のインカたち」

「はるかなる黄金帝国」と「まぼろしの都のインカたち」

 

ちょっとおこがましい気もしますが、ラテンアメリカが好きです。

 

猫が好き、チョコが好き、かわいい雑貨が好き。そんな感じの「好き」です。

 

メキシコに旅行に行ったくらい。南米に足を踏み入れたことはありません。研究者でもなく現地に住んでいるわけでもない。本を読み、テレビで特集があればみる、その程度です。

 

そんな感じでゆるくながーく好きなのですが、ではいつからかというと、小学生だった頃から。この2冊の本に出会ったことで人生がちょっとだけ変わりました。

 

 

二作は連作です。上下巻と考えてもいいかも。舞台は15世紀、インカ帝国の滅亡とその後を描いた物語です。

 

目次

 

「はるかなる黄金帝国」のあらすじ

「はるかなる黄金帝国」

 

タワンティンスーヨ(インカ帝国のこと)の貴族、ルーミには3人の子がいた。

 

長男のクシは物静かで思慮深い性格。次男のワマンはわんぱくで、親分肌の明るい子だ。末娘のチャスカには生まれつき不思議な力があり、遠い土地での災害や不幸を予知することができた。

 

やがてクシとワマンは、貴族の子弟が通うヤチャイワシ(学校)で学ぶことに。ある日クシはいたずら好きの少年と出会う。彼は皇帝ワイナカパックの子、アタワルパだった。

 

アタワルパが生まれたキート(現エクアドルの首都)では、未だ他部族との争いが絶えない。そんな帝国の辺境で、アタワルパは自然に囲まれてのびのびと育ったのだった。

 

水と油のようなクシとアタワルパだが、クシはアタワルパのおおらかな性格に惹かれ、アタワルパもまたクシの誠実な人柄に信頼を寄せた。

 

幸せな少年時代を送った彼らだが、その後、運命は急変する。

 

はるかなる黄金帝国 挿絵

 

ワイナカパックが亡くなり、帝位はふたりの王子によって争われた。ひとりはアタワルパ、もうひとりは首都クスコで育ったワスカルだ。宮廷育ちでおだやかな性格のワスカルと、軍事に長けたアタワルパ。血で血を洗う内戦の後に勝利を得たのはアタワルパだった。

 

しかし喜びもつかの間、アタワルパはスペイン人によって捕らえられてしまう。

 

アタワルパはクシに助けを求めるが、その頃クシには愛する妻と息子がいた。応じれば危険な旅になる。貴族の暮らしを捨てた自分についてきてくれた妻と、チェハン(真実)と名付けた幼い息子をおいて出てよいのか。

 

悩んだ末、クシはアタワルパの元へ向かった。少年の頃の友情を裏切ることはできなかったのだ。

 

まぼろしの都のインカたち」のあらすじ

まぼろしの都のインカたち (1982年)

 

チェハンが少年になったころ、クスコの家に叔父のワマンが訪ねてきた。ワマンはタワンティンスーヨの貴族だ。彼はチェハンに、ビルカバンバに来るよう誘った。

 

ビルカバンバ。

 

アタワルパの処刑後に帝位についたマンゴ2世や、彼に従う貴族たちが暮らす秘密の都だ。そしてそれは、征服者スペイン人への抵抗運動の拠点でもあった。

 

チェハンは行きたかった。気がかりは母、チャスカだ。しかしチャスカは不思議な力でチェハンの望みを見通しており、ともにまぼろしの都ビルカバンバへ旅立つことを決意する。

 

ビルカバンバでチェハンは成人し、4人の皇帝に仕えた。そのうちのサイリ・トゥパクやティトゥ・クシとは年も近く、親しくして育った幼なじみのようなものだ。

 

チェハンたちはスペイン人たちを倒し、いつかクスコに凱旋する日を夢見ていたが、ビルカバンバの中には現実的な融和策を唱える者も現れ始めた。ティトゥ・クシはその思惑を汲まざるを得ず、キリスト教への改宗を承諾する。

 

不利な状況が続く中、チェハンも家族を持った。

 

まぼろしの都のインカたち 挿絵

 

やがてビルカバンバが焼け落ちる日が来た。ジャングルへ落ち伸びる中で、チェハンは皇妃に仕える女性から赤ん坊を託された。家族に預け、遅れてクスコへたどり着いたチェハンの目の前で、最後の皇帝トゥパク・アマルーは処刑された。

 

ボロボロになって戻ったチェハンを妻のコイユールが迎える。

 

「今できることを精いっぱいやっていれば、遠いものもだんだん見えてくるんじゃないかしら。あなたが、きょう生きることをやめてしまったら、あしたはもう来ないかもしれないわ」

 

コイユールの言葉に、チェハンは生きようとする力を取り戻す。

 

まとめ

児童書であり、インカ帝国の人の側から語られるお話ですが、史実を曲げることはしていないようです。血を分けた兄弟による内戦から帝国の崩壊、その後の抵抗運動、ジャングルに消える結末まで、大きなスケールのお話がわかりやすい文章でつづられています。

 

絶版なので入手は難しいのですが、この辺りの歴史に興味がある人には全力でおすすめしたいところ!

※「まぼろしの都のインカたち」はちょうど、岩波文庫の「インカの反乱: 被征服者の声 」と同時期のお話です。ただ「インカの~」を読むと、史実にウグゥ……となるかも。私はなりました。

 

いやしかし、堅苦しいお話ではなく、遠い昔のアンデスを舞台に、友情と恋、政治と軍事、さまざまな思惑と生き方と、そうしたことが激動の歴史と同時に語られていくのですから面白いこと間違いない。ないよ!

 

私はこの本を読んでからインカ帝国に関心を持ち、それからもずっと中途半端にラテンアメリカを追いかける人間になりました。何かの役に立ったわけでも、何か得したわけでもありませんが、私の人生はこの本のおかげでちょっとだけ豊かになったように思います。

 

心がね。

 

とても大切なお話です。